音楽の友 2006年9月号 Concert Reviews
            
モーツァルト「フルート協奏曲」全曲演奏会

 モーツァルトのフルートと管弦楽のためのすべての作品をピリオド楽器で演奏する、しかも、有田正広と東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ(コンマスは寺神戸亮)の久し振りの東京公演というだけあって事前の期待度は高い。2階正面から見るとほぼ満席という盛況振りである。
「協奏曲第2番」では生き生きとした前奏に導かれてソロが登場すると、鳥の囀りを想起させるカデンツァも含めて霊感に富んだ演奏を披露。ソロの箇所で弦楽が各パート1人になるため、フルートがはっきりと聴こえる上に音楽的にも室内楽的な濃やかさがもたらされる。
「アンダンテ」K.315や「ロンド」K.373はすばらしく優美であると同時に、和声の変化に合わせて色彩を変え、時には力強い情念も聴かれる。
ハープの名手長澤真澄を共演者に迎えた「フルートとハープのための協奏曲」では、2人のソリストの呼吸もぴったり合って、緩徐楽章などは陶然とするほどの美しさ。
「協奏曲第2番」もそうだが、有田のフルートのみずみずしい音色と円熟の表現、細部まで熟考された精妙精緻なアンサンブルによる高水準の出来栄えだった。
なお当公演は皇太子及び皇太子妃がご臨席された。

7月2日・東京芸術劇場


   ・那須田 務

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